名言・語録一覧
リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしてもいい将棋を残すことはできない。
次のステップにもならない。
それこそ、私にとっては大いなるリスクである。
決断を下さないほうが減点がないから決断を下せる人が生まれてこなくなるのではないか。
決断とリスクはワンセットである。
どんな場面でも、今の自分をさらけ出すことが大事なのだ。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」だ。
「まだその時期じゃない」「環境が整っていない」とリスクばかり強調する人がいるが
環境が整っていないことは、逆説的に言えば、非常にいい環境だと言える。
リスクの大きさはその価値を表しているのだと思えば、それだけやりがいが大きい。
慣れていない、感覚でとらえられない局面は
たとえ失敗があったとしても、挑戦の楽しさがある。
将棋に限らず、何事でも発見が続くことが、楽しさ、面白さ、幸せを継続させてくれると思っている。
相手は敵であると同時に作品の共同制作者であり
自分の個性を引き出してくれる人ともいえる。
棋士は指し手に自分を表現する。音楽家が音を通じ、画家が線や色彩によって自己を表現するのと同じだ。
趣向には思想がなければならない。
新たな地平を開拓する一歩でなければ、ただのこけ威しにすぎないだろう。
もし、私が将棋の神様と対局したら、香落ちでは木っ端みじんにやられてしまう。
角落ちでやっと勝たせてもらえるだろう。
勝負どころを検証する「読み」についていうと、年齢が上がるにつれ読めなくなる人がいるが
それは読めないのではない。短い時間で閃かないだけで、時間をかければ読める。
確かに、年代が上がると、短時間で読む力は衰える。
私も、二十歳のときから見ればだいぶ落ちている。
その代わり、年を重ねると、思考の過程をできるだけ省略していく方法が身につく。
私も、二十歳のときから見ればだいぶ落ちている。
その代わり、年を重ねると、思考の過程をできるだけ省略していく方法が身につく。
私は、いつも、決断することは本当に難しいと思っている。
直感によって指し手を思い浮かべることや、検証のための読みの力も大切であるが
対局中は決断の連続である。
その決断力の一つ一つが勝負を決するのである。
この筋はダメという結論が出たときに、長い時間考えると、その手筋を捨て去ることが思い切れなくなることがある。
情が移ってしまうのだ。
長い時間考えた手がうまくいくケースは非常に少ない。
一時間以上考えているときは、考えるというよりも迷っている。
確信をもって、「これ!」と決断するのは意外に難しく、どの道を選んでも
「これもありそうだ」とか「どれを選んでもうまくいきそうもない」と
決断できないケースがものすごく多い。
最後には、「どうにでもなれ!」という心境で決断することも結構ある。
周りの信用の後押しが、ぎりぎりの勝負になって出てくるのではないかと思っている。
プロ野球などで、「チャンスに強い。打ってくれるだろう」とファンから期待される選手がいる。その期待に応えてサヨナラホームランを打つ。チームに劇的な勝利をもたらしたあとのインタビューで「ファンの皆様のお陰です」と答える場面をよく見かける。これは、決して社交辞令ではない。
どちらかに勝たせたい、といった気分は
対局場のどこかに必ずあり、それを隠すことはできない。
空気を対局者は鋭く感じ取ってしまう。
守りたければ、攻めなければならない。
守ろう、守ろうとすると後ろ向きになる。
常に前進を目指さないと、そこでストップし、後退が始まってしまう。
将棋の対局はきわめて厳しい。
(米長邦雄)先生が
「対局が終わると、頭の血管が膨れあがり、頭皮が真っ赤になっていることがある」
といわれたことがある。それほど長く、深く集中するのだ。
若い私ですら一局が終わると疲れ果て、翌日は身動きするのもつらいほどである。
それぐらい消耗するのだ。
勝負の世界では「これでよし」と消極的な姿勢になることが一番怖い。
「これがよさそうだ」という手が一つも見えない場面も非常に多い。
そういうときは、できるだけ可能性を広げて、自分にとってマイナスにならないようにうまく相手に手を渡すのだ。
自分から踏み込むことは勝負を決める大きな要素である。
相手に何もさせたくないからと距離を十分に置いていると
相手が鋭く踏み込んできたときに受けに回ってしまう。
相手が鋭く踏み込んできたときに受けに回ってしまう。
決断するときは、たとえその手が危険であっても、わかりやすい手を選んでいる。
かなり危険だと判断しても、私は、踏み込んで決断するほうだと思う。
情報を多量に知識として詰め込んでいれば
非常に高いレベルでも「自分はそれをすでに完璧に習得している」と
錯覚してしまうことも考えられる。
今は情報化時代なのだ
一般に経験は人を強くするという固定観念があるが、いろいろ考えすぎてしまい
一番いい方法にたどり着くのに時間がかかったりしてしまう。
経験をつんで選択肢が増えている分だけ、怖いとか、不安だとか、そういう気持ちも増してきている。
毎回毎回通用するものではなく、瞬間的な若さの特権だったのだろうと、今は思っている。
危ないところでも、危険を顧みずに平気で渡っていける。若さの強さだと思う。