佐和隆光 8

生 1942年11月13日
日本の経済学者。前滋賀大学学長、滋賀大学特別招聘教授。京都大学名誉教授、京都大学経済研究所特任教授。専攻は計量経済学、環境経済学。経済学博士(東京大学、1971年)。...-ウィキペディア

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親の経済的格差を子どもたちが世襲する、格差の固定化は、
民主主義社会において、あってはならない不平等なのです。

トマ・ピケティは、米国の経済学が数理一辺倒であることに愛想を尽かし、
マサチューセッツ工科大の職を辞し、高等社会科学院に転職した。
人文知(哲学・文学・歴史学)と縁切りし、数理の奴隷と化した米国経済学界に、
ピケティはほとほと愛想を尽かしたのだ。

思考力、判断力、表現力、を養うには、人文社会系が欠かせない。
ケンブリッジ大学やオックスフォード大学で入学が最も難しいのは歴史学科だ。
実は、外交官をはじめ高級官僚の過半数が歴史学科卒なのだ。
大学四年間かけて歴史をみっちり勉強し、
法律学や経済学は、オン・ザ・ジョブで学べというのがイギリス式官吏養成法なのである。

目下、大学の人文系学部に対し、批判の声が渦巻いている。
文部科学省の有識者会議で、
「文学部ではシェイクスピアの代わりに英語通訳」
「法学部では憲法の代わりに宅建法」
「経済学部では経済学の代わりに簿記や会計ソフト」
を教えるべきだなどと、
私に言わせれば暴論を唱える“有識者”がいたりする。

法学部生のうち、司法界に職を得るのは高々一割止まり。
官庁や企業の事務職に就く法学部卒は、無用の学を修めた輩と見なされる。

文学、哲学、政治学、歴史学、経済学説史、を学んでも、
すぐさま官庁や会社で役立ちそうにない。
人文学部は、無益ならまだしも、
政財界の利益に叶う政策を批判する“有害”な学者を養成する。
役に立たない?否、有害な人材を養成することに税金をつぎ込むのはけしからぬ、
と政財界のお歴々は言う。

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旧ソ連では、体制を批判する“有害な”人文学者は弾圧の憂き目にあった。
実際、旧ソ連共産党書記長も、中国の国家主席も、代々工学部出身。
政府を批判する不都合な言論を統制・抑圧するには、
文系学部を廃止するに越したことはない。
政財界人や有識者が、文系学部の縮小を図ろうとするのは宣なるかなと頷ける。

経済学の制度化には、人文知よりも数字に重きをおく傾向を強める弊害があります。
哲学、歴史、思想的知性を、軽視してはなりません。