トマ・ピケティ 34

生 1971年5月7日
フランスの経済学者。クリシー出身。経済学博士。パリの高等師範学校の出身で、経済的不平等の専門家であり、特に歴史比較の観点からの研究を行っている。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞 (Prix du meilleur jeune économiste de France) を受賞。パリ経済学校 (École d'économie...-ウィキペディア

どの国も、機会の平等や能力主義を実現しているという神話を持っているが、現実は違う。

能力主義は大切だと誰もが口では言うが、実際はそうなっていない。

現状の資本主義は世襲主義。

例えばアメリカの教育制度は今とても不平等だ。
ハーバード大在籍学生の親の平均収入は、上位2%の平均収入に相当する。
上位2%の家庭以外から入学する学生は極めて少ないわけだ。
社会の流動性や機会の均等がアメリカの建前になっているが、
現実とは大きくかけ離れている。
フランスのパリ政治学院では9%。
フランスや日本でも、機会の平等は建前だけになりつつある。

優秀な学生が富裕層の子弟に独占されている米国の例を見れば、
経済成長の鍵の一つは平等な教育アクセスにあることがわかるだろう。

(先進国は)世襲社会に回帰しつつあり、
(このままなら)この傾向は今後も強まるだろう。
だが格差拡大は政策で制約できる。

広告


(富裕層が実権を握る現代社会では、富裕層への増税が実現できるかは疑問が残るが)
税は国ごとの政治判断で導入される。民主的な国なら不可能ではない。

金持ちたちはこう言う。
『これは貧しい人にもよいことだ。なぜなら成長につながるから』。
だがエリートや指導層はしばしば欺瞞的だ。

あらゆる社会は不平等を正当化できる理由を必要としている。
不平等の歴史は常に政治の歴史だ。単なる経済の歴史ではない。

格差は経済だけの問題ではなく政治の問題。

私は格差が何もかもいけないと言っているのではない。
本当に全員の利益になっているのなら許されることもある。
その点はロールズと一緒だ。

ロールズは哲学者。
広告

行きすぎた格差は、政治的発言力や影響力で大きな差を生んでしまう。
最近米国の選挙で顕著なように、政治献金という形で、
民主主義制度に危機をもたらしている。

公的資産民営化や金融規制緩和が進み、
巨額の投資ができる者の富が急速に増している。

トップが10億円もの年俸を貰うなんて、
経済効用の面からも経済成長の面からも有益ではない。

中産階級などが富裕層に比べて厳しく税を取り立てられているのに、
得るべきはずの見返りが不充分では、社会の連帯は崩れ、ナショナリズムが台頭する。

本当に全ての人の所得や資産が伸びていれば、格差はここまで問題視されない。

格差(の放置)は民主主義を脅かす。

行きすぎた格差に共同利益は無い。経済成長も阻害する。

少子高齢化の影響で高齢者に偏在する資産への課税を強化して、
資産形成が見込めない若年層の救済に充てる必要がある。

社会に流動性があればいいというが、最富裕層が毎年入れ替わったとしても、
容認できないほどの不平等が起きている。
数千億円におよぶ億万長者らの平均資産額は、
世界経済の成長率や世界平均的資産額の3~4倍も高い比率で伸びている。


    高額納税者の税率をもっともっと上げればいいのでは?お金があっても買いたいものが見つからない金持ちはどうしてるんだろうね。 - 銘無き石碑

自然の流れに任せていても、
不平等の進行が止まり一定のレベルで安定するということはない。
適切な政策、税制をもたらせる、公的な仕組みが必要である。

資本主義と平等主義(平等な民主主義)は両立可能だ。
ただし、その条件は、何でもかんでも競争だというイデオロギーから抜け出すこと。
欧州統合などは、
自由な流通と完全な競争があれば全ての問題は解決するという
馬鹿馬鹿しい考えに基づいていた。

ドイツの自動車メーカーでは労組が役員会で発言権を持っているけれども、
それは良い車を作るのを妨げていない。
民主主義や平等は効率と矛盾しない。
危険なのは資本主義が制御不能になることだ。

今、不平等を減らすために私たちが取り組むべき挑戦は、かつてより難しくなっている。
グローバル化に合わせて、国境を超えたレベルで
税制上の公正を達成しなければならない。

より平等なモデルを維持するためには、
行政や税制を、新たな情報化時代に相応しいものにすることが必要だ。