イビチャ・オシム 42

生 1941年5月6日
ユーゴスラビア(現・ボスニア・ヘルツェゴビナ)のサラエヴォ出身のサッカー選手、指導者。愛称はシュワーボ。なお、より原音に忠実な表記はイヴィツァ。 旧ユーゴスラビア代表の最後の監督であり、日本でもジェフユナイテッド市原・千葉、日本代表で監督を歴任するなど、世界各国で豊富な指導歴を持つサッカー指導者である...-ウィキペディア

自分のプレーに対する責任感が希薄である。

我々は誰でも、何も学ばずに日々生活することはできない。眼があり、耳があり、そして頭があるのだから、眠っていない限り、眼で見て、耳で聞いて、頭で何かを理解する。
   『日本人よ!』

私は日本代表監督就任のオファーを受けた。
(中略)
私の日本での挑戦(チャレンジ)が認められた証であり、名誉以外の何ものでもなかった。
私たちがJリーグでいかにプレーし、何かを変えたということを誰かが認めてくれたのならなおさらだ。
また、それは同時にジェフの選手たちが成し遂げたものであり、彼らが最も称賛に値する。
   『日本人よ!』

私の頭ではなく、自分の頭で考えなければならない。

それは私にとって大変なリスクだった。
いや、妻のアシマにとってのリスクだったのかもしれない。
だが、「リスクを冒し勇気を奮い立たせろ」と、何度も繰り返してきた私自身が
リスクを負わないで日本代表を語れるだろうか。

医師に長時間の仕事を止められていてなおワールドカップの日本代表関連の仕事を引き受けたことについて。
31日間の大会は長かった。

Jリーグのスタジアムに観客を集めなくてはならない。

Jリーグのクラブに才能と可能性を持った若い選手たちをたくさん入団させることが、ひいてはレベル向上につながっていく。
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私は、日本が、ベスト8、ベスト4というものを成し遂げられなかったことを
心から残念に思っている。素直に悔しいのだ。

現実的に考えれば、この先、そう何度も、ワールドカップでベスト8のチャレンジはできない。
それほど得がたいチャンスであったことに、いったいどれだけの日本人が気づいているのだろうか。

矛盾するようだが、私は、チーム内のフェアな競争が、その平和的な雰囲気をもたらしたのだと考えている。

日本代表チームの監督、スタッフ、ピッチ上の選手、ベンチの雰囲気が良かったことについて

本当の自信を持ったプレイヤーは、不思議なことにビッグマウスを発揮することが心地悪くなるようである。

若い選手のメディアへのビッグマウスは出場できないベテランを刺激して空気が悪くなることがある

デンマーク戦のデータを見ると、実に本田には日本全体の28%ものパスが集まっている。
これは、他の選手たちの自信の欠如をもってして説明可能である。
本田が、自分の仕事を全うし、よく動いているのを見て
「それを利用したい」「彼を活用したい」と周囲の選手が思ったのだろう。
おそらく「本田がミスしても彼は若い。彼なら誰もヤリ玉にはあげない」
と選手たちは考えていたのだろう。
日本人は、誰もが、責任を回避しようとする。

第2章 ベスト16の真実 より

サッカーにおいて責任感の果たす役割は大きい。
現代サッカーは責任感に基づいていると言っても過言ではない。

責任感のある選手だけが、プレーできるのだ。
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今大会でリスクを取らずにプレーしたチームは何も日本だけではない。
それらのチームを比べるとひとつの共通項がある。
大きなプレッシャーにさらされたチームであり、世論や母国から彼らに
キャパシティ以上を達成することを要求されたチームである。

選手たちは多くのリスクを取らずにプレーすることがベストであると理解したのだ。

PK戦はサッカーではない。

最初に書いておくが、PK戦はサッカーではない。

日本人は時折、責任感に押し潰される。

たくさんの素晴らしい仕事を成しえても、たったひとつのエラーで、すべてが台無しとなるのだ。

私には、PK戦の瞬間に選手たちが、どのような心理状態でいるのかが
手に取るようにわかる。
あたかも私が選手たちの肌の中にいるようにさえ感じる。

PK戦が、私を、今のこんな健康状態にしたのかもしれない。

メディアは本田に過大な要求と期待をして、そして潰すだろう。

本田にとって邪魔なプレッシャーであることは指摘するまでもない

    よく見てる - 銘無き石碑

2、3のいいパフォーマンスを見せ、ひとつか2つのゴールを記録するだけで
ジャーナリズムはすぐに、その選手のことを「日本のエースである」と宣言するものらしい。

悪いが、私は、そういう風に軽くサッカーを見ていない。

人はロバに機関車を運ばせることはできないのである。

説明するまでもないが、本田は、メッシからは遥かに遠い。

リーダーには生まれながらの資質があるのだ。
その資質とは、技術での優位性ではなく、性格だと考えている。

アグレッシブに最後までプレーをし続けるというパーソナリティだ。

日本流の子育てにもひとつの理由があるのだろう。
従順な子供は扱いやすいかもしれないが、これが、
サッカーでは一番大きなハンディキャップとなるのだ。

突発的な問題がピッチ上で起きたときに、それを一人で解決する能力がなければゲームに勝つことなどできないだろう。

練習では、決してビッグゲームのフィーリングやテンションを作り出すことはできない

第3章 南アで日本代表に見えたもの より

まず第一にスタジアムに殺気がないのだ。

Jリーグにおけるサッカーは、まだまだ未完成だ。

雰囲気が、まるでぬるま湯のようであれば
そこで何かビッグなことを成し遂げるのは難しい。

敵がミスを犯す状況に陥れなければならない。

たとえば松井だ。私は、松井と、彼の流暢なフランス語で20~30分ほど個人的に話をした。
松井は、「あそこかあそこでプレーしたい」と具体的なクラブ名を2つ3つ挙げた。
それは、私の知っている名前ではあったが、FCバルセロナではなかった。

私が抱いた印象は「彼らは野心的ではないな」というものだった。