デーヴ・グロスマン

グウィン・ダイア「戦争」より

若いうちにつかまえたほうが簡単だ。
成人でも訓練して兵士にすることはできるし、過去の大戦争ではつねにそうされてきた。
しかし、戦争を好きだと思い込ませることは絶対にできない。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)408p
ある戦闘機乗りがモラン卿に語った

二機か三機撃ち落すとその効果は絶大で、自分が殺されるまで撃ちつづけることになる。
義務感じゃなく、スポーツのおもしろさでやめられなくなるんです。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)369p

魂は半分だけ売るというわけにはいかないのである。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)361p

抑圧、不正、虚偽という力のなかには、歪んだ論理と能力が宿っている。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)360p

殺人への抵抗感を克服しようとしない<善>は、
否定しようのない<悪>に直面すれば、最後には破滅するしかないのかもしれない。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)360p

殺人者の精神の健康は、
自分の行いが善であり正義であると信じられるかどうかにかかっている

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)337p
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残虐行為は相手の人間性を否定する究極の行為であり、
殺人者の優越を肯定する究極の行為である。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)337p
モラン卿「勇気の解剖学」より

戦争……が人を変えるわけではない。ただ人のうちにある善と悪を膨張するだけだ。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)331p
1982年レバノン駐屯イスラエル予備兵ガービィ・ベイシャンの言葉
グウィン・ダイア「戦争」より

いいかい、おれだって人を殺したかないさ。だけどアラブ人なら殺したことがある。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)320p
カリー中尉の属する中隊指揮官メディーナ大尉による部下へのブリーフィングにて

「われわれの任務は、急襲してなにもかも破壊することだ。全員を殺せ」
「女子供もですか?」
「全員と言ったんだ」

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)308p

さまざまな変数を操ることで、現代の軍隊は暴力の流れを管理し、
水道の蛇口でもひねるように殺人のエネルギーを出したり止めたりしている。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)302p
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ひとりでは殺せないが、集団なら殺せる

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)256p
グウィン・ダイアが面接調査したあるベトナム帰還兵(海兵隊員)のことば

どんなに訓練を受けてても、第一の本能は死にたくないってことだ。
……だけど、まわれ右して逃げ出すわけにはいかない。仲間の圧力だよ、わかるだろ

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)254p

正気の人間なら望まないこと(つまり殺し、殺されること)を
戦場の兵士が実行する第一の動機は、
自己保存本能ではなく、戦友に対する強力な責任感である。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)253p
ピーター・ワトスン「精神の戦争」より

敵を殺す動機と意志は、同輩や仲間の死とともに消滅する。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)253p
キングズリー・エイミス「ザ・マスターズ」より

命令があやふやだと銃手は外す
信用できそうに見える者だけが信用される……

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)241p
S・L・A・マーシャル「発泡しない兵士たち」より

戦争を理解するには、まず人間の本性を理解することだ。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)240p

殺人という行為に惹かれるのも、近距離での殺人に抵抗を感じるのも、
多くの場合そのよってきたる源にあるのは人間の邪悪さである。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)232p
アルダン・デュピク「戦争の研究」より

離れて戦おうとするのは人間の本能だ。
最初の日から人はそのために努力し、その後もずっと努力しつづける。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)194p
ダグラス・ハーヴィ(第二次大戦の爆撃機パイロット。再生ベルリンを60年代に訪れて)
ポール・ファシル「戦時」より

私には罪悪感はなかった。達成感もなかった。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)190p
第二次大戦に従軍したもとドイツ兵の言葉

あのときは大したこととも思わなかったが、いま思い出すと
……私はこの手であの人たちを虐殺したんだ。皆殺しにしたんです。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)165p
ジョン・キーガン&リチャード・ホームズ「兵士たち」より

兵士は殺され、傷つく危険を冒しているだけでなく、他者を殺し、傷つけてもいるのだ。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)163p
モラン卿の言葉

成果をあげることは、たちまち士気をよみがえらせる。
……だが、概して時間は兵士の敵である

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)160p
ヴィクトル・フランクル(ナチ強制収容所の生還者)の言葉

異常な状況に異常な反応を示すのは正常な行動である。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)150p
老退役兵の言葉

若くて元気なうちは頭から閉め出しておけても、
老年になると記憶は夜ごとの夢に戻ってくる。

著・デーヴ・グロスマン 訳・安原和見 『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫,2004)145p