エミール・シオラン 11
1911年4月8日 - 1995年6月20日
ルーマニアの作家・思想家。若年期のエクスタシー経験と、メランコリー、鬱、不眠など、生涯にわたる精神的苦悩をもとに特異なニヒリズム的思索を展開した。…-ウィキペディア
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我々が生きていけるのはただただわれの想像力が貧弱だからに過ぎない
俺にまだいくらかの希望が残っているにしても、希望する力は永久に失ったのだ。
崩壊概論
私は死にたいと願うが、死を願ったことを悔やむのだ。
絶望のきわみで
病人の秘められた欲望は、だれもが病気になって欲しいということであり、瀕死の人のそれは、だれもが断末魔を迎えて欲しいということだ。わたしたちが、さまざまの試練のなかで願うのは、他の連中がわたしたちと同じように、わたしたち以上ではなく、ちょうど同じだけ不幸であって欲しいということだ。
時間への失墜
地上楽園の信奉者たちと私との不和の、その深い理由を指摘せねばならぬとしたら、私は次のように明言しよう。すなわち、人間の抱く一切の企図が、遅かれ早かれ人間自身に刃を向けることになる以上は、理想的な社会形態を追求してもむだなことだ、と。人間の行為は、たとえ高潔なものであろうとも、結局は人間を粉砕するべく、人間の前に立ちふさがるのである。各人は、例外なく、おのがじし夢見るものの犠牲となり、みずから実現するものの犠牲となるだろう。生成はその本質からして、私には一個の長々しい贖罪と見える。すなわち、個人であれ集団であれ、人間は自分の遂行した一切の征服行為を、「歴史」の中での一切の前進の歩みを、やがては償わねばならないのである。
歴史とユートピア
私が己を自負する唯一の理由は、20歳を迎える非常に早い段階で、人は子供を産むべきではないと悟ったからだ。結婚、家族、そしてすべての社会慣習に対する私の嫌悪感は、これに依る。自分の欠点を誰かに継承させること、自分が経験した同じ経験を誰かにさせること、自分よりも過酷かもしれない十字架の道に誰かを強制することは、犯罪だ。不幸と苦痛を継承する子に人生を与えることには同意できない。すべての親は無責任であり、殺人犯である。生殖は獣にのみ在るべきだ。
カイエ 1957-1972
ペシミズムとは、自分の期待を裏切った人生というものを許せない敗北者の過酷さなのである。
崩壊概論
生の秘密の一切は、次の点に帰着する。すなわち、生には何の意味もないが、にもかかわらず私たちはそれぞれ生に意味を見出しているのである。
思想の黄昏
自分以上のものになろうと願う者は、必ずや自分以下のものになるだろう。
時間への失墜
あてのない散歩から人肉嗜食に至るまで、人間がありとあらゆる行為の階梯を駆け抜けることができるのは、その無意味さに気づかないせいにすぎない。地上でなされることすべては、空虚の中でのまやかしの充実感、「無」の神秘から流れ出るのである……。
世界の「創造」と「破壊」以外、あらゆる企てはどれも等しく無価値である。
崩壊概論 行為の解釈より
わたしたちは自分を無意味だと思えば思うほど、ますます他人を軽蔑する。そして自分の無意味が明らかになると、他人はわたしたちにとって存在さえしなくなる。
時間への失墜