地上楽園の信奉者たちと私との不和の、その深い理由を指摘せねばならぬとしたら、私は次のように明言しよう。すなわち、人間の抱く一切の企図が、遅かれ早かれ人間自身に刃を向けることになる以上は、理想的な社会形態を追求してもむだなことだ、と。人間の行為は、たとえ高潔なものであろうとも、結局は人間を粉砕するべく、人間の前に立ちふさがるのである。各人は、例外なく、おのがじし夢見るものの犠牲となり、みずから実現するものの犠牲となるだろう。生成はその本質からして、私には一個の長々しい贖罪と見える。すなわち、個人であれ集団であれ、人間は自分の遂行した一切の征服行為を、「歴史」の中での一切の前進の歩みを、やがては償わねばならないのである。

歴史とユートピア
エミール・シオラン

エミール・シオラン 11

1911年4月8日 - 1995年6月20日
ルーマニアの作家・思想家。若年期のエクスタシー経験と、メランコリー、鬱、不眠など、生涯にわたる精神的苦悩をもとに特異なニヒリズム的思索を展開した。…-ウィキペディア


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