及川肇・遠山善雄・福知貴・伊熊二郎合作集 100

神風特攻隊 及川肇・遠山善雄・福知貴・伊熊二郎の合作集。全員23歳にて昭和20年4月6日、昭和20年4月11日に南西諸島に特攻戦死。

生きるのは良いものと気が付く三日前

予備士官宿舎にて  生きるのは 良いものと気が付く 三日前
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

あと三日、酔うて泣く者、笑ふ者

予備士官宿舎にて
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

ジャンケンで羊カン喰つて腹こわし

予備士官宿舎にて ジャンケンで 羊カン喰って 腹こわし
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

未だ生きてゐるかと友が訪れる

予備士官宿舎にて 未だ生きて いるかと友が 訪れる
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

能筆は、遺書の代筆よくはやり

予備士官宿舎にて 能筆は、 遺書の代筆 よくはやり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

する事のない今日、明日の死が決まり

予備士官宿舎にて する事の ない今日、明日の 死が決まり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。
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明日死ぬと覚悟の上で飯を喰ひ

予備士官宿舎にて 明日死ぬと 覚悟の上で 飯を喰い
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

沈んでる友、母死せる便りあり

予備士官宿舎にて 沈んでる 友、母死せる 便りあり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

悩みある友の気紛れ我黙り

予備士官宿舎にて 悩みある 友の気紛れ 我黙り
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

女とは良いものだぞと友誘ひ

予備士官宿舎にて 女とは 良いものだぞと 友誘い
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

雨降つて今日一日を生きのびる

予備士官宿舎にて 雨降って 今日一日を 生きのびる
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。
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雨の日は飲んでれば良いひとり者

予備士官宿舎にて 雨の日は 飲んでれば良い ひとり者
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

宿の窓、今日は静かに雨がふり

予備士官宿舎にて 宿の窓、 今日は静かに 雨がふり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

明日の空、案じて夜の窓を閉め

予備士官宿舎にて 明日の空、 案じて夜の 窓を閉め
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

電撃機月をかすめて飛んで行き

予備士官宿舎にて 電撃機 月をかすめて 飛んで行き
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

人魂を見たぞと友の青い顔

予備士官宿舎にて 人魂を 見たぞと友の 青い顔
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

人魂ものたくつて飛ぶ一三期

予備士官宿舎にて 人魂も のたくって飛ぶ 一三期
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

女房持ち、人魂行きつ、戻りつし

予備士官宿舎にて
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

幽霊はあるぞないぞと議論なり

予備士官宿舎にて 幽霊は あるぞないぞと 議論なり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

明日の晩化けて出るぞと友脅し

予備士官宿舎にて 明日の晩 化けて出るぞと 友脅し
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

明日征くと決まつた友の寝顔見る

予備士官宿舎にて 明日征くと 決まった友の 寝顔見る
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

神様と思へばおかし此の寝顔

予備士官宿舎にて 神様と 思えばおかし この寝顔
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

人形を抱いて寝てゐる奴もあり

予備士官宿舎にて 人形を 抱いて寝ている 奴もあり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

人形へ彼女に云へぬ事を云ひ

予備士官宿舎にて 人形へ 彼女にいえぬ 事を言い
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

真夜中に、遺書を書いてる友の背(せな)

予備士官宿舎にて 真夜中に、 遺書を書いてる 友の背(せな)
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。