及川肇・遠山善雄・福知貴・伊熊二郎合作集 100

神風特攻隊 及川肇・遠山善雄・福知貴・伊熊二郎の合作集。全員23歳にて昭和20年4月6日、昭和20年4月11日に南西諸島に特攻戦死。

乗つてから別れの酒の酔が出る

出撃の命下る 乗ってから 別れの酒の 酔(よい)が出る
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

脚を折る心配なしと友笑ひ

出撃の命下る 脚を折る 心配なしと 友笑い
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

慌て者小便したいまゝで征き

出撃の命下る 慌て者 小便したい ままで征き
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

乗つてからポケットの金思ひ出し

出撃の命下る 乗ってから ポケットの金 思い出し
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

機上にて涙の顔で笑つて居

出撃の命下る 機上にて 涙の顔で 笑って居
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

死ぬ間際同じ願ひを一つ持ち

出撃の命下る 死ぬ間際 同じ願いを 一つ持ち
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。
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父母恋し彼女恋しと雲に告げ

出撃の命下る 父母恋し 彼女恋しと 雲に告げ
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

黙送の中を静かに特攻機

出撃の命下る 黙送の 中を静かに 特攻機
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

慕はれる隊長一番先へ征き

出撃の命下る 慕はれる 隊長一番 先へ征き
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

一編隊離陸の度に花が散り

出撃の命下る 一編隊 離陸の度に 花が散り
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

帽を降る手のくたびれた整備員

出撃の命下る 帽を降る 手のくたびれた 整備員
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。
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整備員特攻出して気がいかれ

出撃の命下る 整備員 特攻出して 気がいかれ
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

    ありがとう - 神

損ばかりさせた悪友今ぞ征く

出撃の命下る 損ばかり させた悪友 今ぞ征く
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

あの野郎、行きやがつたと目に涙

出撃の命下る あの野郎、 行きやがったと 目に涙
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

ト連奏(突撃合図)途中で切れて大往生

出撃の命下る ト連奏(突撃合図) 途中で切れて 大往生
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

童貞のまゝで行つたか損な奴

出撃の命下る 童貞の ままで行ったか 損な奴
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

今日も亦全機未帰還店閉ひ(指揮所の後片付け)

出撃の命下る 今日もまた 全機未帰還 店閉い(指揮所の後片付け)
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

還らぬと知りつゝも待つ夕べかな

出撃の命下る 還らぬと 知りつつも待つ 夕べかな
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

今日も亦全機還らず月が冴え

出撃の命下る 今日もまた 全機還らず 月が冴え
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

春の空今日にも静かに暮れて行く

出撃の命下る 春の空 今日にも静かに 暮れて行く
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

友を待つ空にまばらな星のかず

出撃の命下る 友を待つ 空にまばらな 星のかず
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

従兵は夜毎寝床の数を聞き

宿舎に帰りて 従兵は 夜毎寝床の 数を聞き
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

次々と煙の如く友は失せ

宿舎に帰りて 次々と 煙の如く 友は失せ
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

ふえてゆく遺品従兵もてあまし

宿舎に帰りて ふえてゆく 遺品従兵 もてあまし
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。

遺品中自分のやつた品もあり

宿舎に帰りて 遺品中 自分のやった 品もあり
白鳩遺族会編河出書房版 雲流るる果てに より。