生計
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一身の衣食住が確立すれば、それで満足するというのなら、人の一生はただ生まれて死ぬだけのことになる。
一身の衣食住を得てこれに満足すべきものとせば、人間の渡世はただ生まれて死するのみ、その死するときの有様は生まれしときの有様に異ならず。
鳥獣魚虫が、自分で食物を得られぬだろうか。
蟻などは、食物を得るだけでなく、冬に備えて穴を掘り巣を作り、食糧を蓄えている。
ところが世の中には、この蟻と同様の行為をしただけで、すっかり満足している人間がいる。
禽獣魚虫、みずから食を得ざるものなし。ただにこれを得て一時の満足を取るのみならず、蟻のごときははるかに未来を図り、穴を掘りて居処を作り、冬日の用意に食料を貯うるにあらずや。
しかるに世の中にはこの蟻の所業をもってみずから満足する人あり。
しかるに世の中にはこの蟻の所業をもってみずから満足する人あり。