ハインリヒ・ハイネ 119

1797年12月13日 - 1856年2月17日
ドイツの作家、詩人、文芸評論家、エッセイスト、ジャーナリスト。デュッセルドルフのユダヤ人の家庭に生まれる。名門ゲッティンゲン大学卒業、法学士号取得。当初は商人、ついで法律家を目指したが、ボン大学でA・W・シュレーゲルの、ベルリン大学でヘーゲルの教えを受け作家として出発...-ウィキペディア

君がむねに寄るときは
天の悦びわれに湧き、

君を慕うと告ぐるとき、
涙はげしく流れ落ちたり

君にくちづけするときは
たちまち晴るるわが思い。

二人の恋幕が同時に燃えた。

遠い国にいるなつかしい人よ、
この本があなたの手にとどくときに。

おれは墓の中に寝て、
じっと見張りをしていたい。

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おれは姿やさしい花の方へ
やっぱり気を引かれる。

それを愛してはいかんということになれば
おれの生きている意味はどこにある?

そこに住むのは、意地わるな大工。
僕のひつぎを作っているのだ。

急いで仕上げろ、大工ども。
僕はぐっすり眠りたいんだ。

いとしい人よ、君の手を

聖なる戸口よ、お別れだ。
始めてその人に僕が逢った
聖なる場所よ、お別れだ。

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あなたに逢いさえしなかったら、
僕は今こうもみじめな悲しさを
味わうこともなかったろうに。

ただ静かな生活がしたかった、
あなたの息の漂っているその場所で。

いとしい人よ、君の手を此の胸の上に置きたまえ。
さて聴きたまえ、心臓の小部屋の中の高鳴りを。

この地の上の、薔薇いろの光の中に
まだたくさんの楽しみが残っているかもしれぬ。

わが前には水の砂漠、
うしろには愁いと惨めさ、
頭上には走りゆく雲、

わが心それも海なり、
満干あり、吹く嵐あり、

雪が去って花の季節が来たのだ。
お前の心も新しく愛に向ってひらく。

海と天とが声を合わせて
堂々と歌い鳴るのを私は聞く。

はらからよ、わが死ぬ日、
海ばらにわれを沈めよ。

白百合は結晶の柱のように
天に向ってまともに伸びる。

それなら、この僕をごらんなさい。
僕に口づけして、しっかりとお見つめなさい。

大きく強気眼の光は
黒き太陽のごとくに照る。

頭はからっぽ、胸は一杯。
何を書いたらいいのかわからぬ。

私は全世界を残らず歩きつくしたかった。