ヘルマン・ヘッセ 172

1877年7月2日 - 1962年8月9日
ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者である。 風景や蝶々などの水彩画もよくしたため、自身の絵を添えた詩文集も刊行している。そして、1946年、彼は...-ウィキペディア

ささやかな人間、下積みの人間、貧しい人間のあいだでも、
生活は同様に多彩であるばかりでなく、むしろたいていは、
恵まれた人々や輝かしい人々の生活より、よりあたたかく、真実で、
模範的だということを、だんだんよりよく知るようになった。

悩みや失望や憂愁が訪れるのは、私たちを不愉快にし、
価値も品位もないものにするためではなく、
私たちを成熟させ、光明で満たすためであることをも、私は理解し始めた。


    君がこの言葉を見つけてくれたことに感謝。 - 銘無き石碑

牧師が言うような天国はありゃしないよ。
天国はもっとずっと美しい。
ずっと美しい。

あの望みがいのある女性のために、
いじを張り、涙を流しながら、愛と苦しみを忍んだのは、
なにゆえだろう?

自分のほうで愛していないのに、
愛されるのは特に楽しいことにちがいない、
と思っていた。
しかしいま私は、こうして愛をささげられながら、
それにこたえることのできないのは、
どんなにつらいものであるかを知った。

恋する青年の悩みは、たといどんなに苦しくとも、
悲劇などまったく含んでいないことをも、私は徐々に一そう深く悟るようになった。

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こんなきれいな方なのに、失恋なさるなんて!

幼年期が腐朽して、しだいにくずれおちてゆくとき、すなわち、
いとしくなったすべてのものが、われわれを見すてようとして、
われわれがとつぜん、宇宙のさびしさと、
死のようなつめたさを、身のまわりに感じる、

だからぼくたちはめいめい、ゆるされていることと、禁じられていること
自分にとって禁じられていることを、自分ひとりでみつけなくてはならないんだ。

要するに便宜の問題なのさ。
自分で考えたり、自分で自分をさばいたりすることをめんどくさがる人は、
だれでも、昔からきまっている禁令に、だまって従ってしまうんだ。

きみを飛行させるその振動というのはね、それは、
だれでも持っている人類の大きな財産なのだよ。
・・それを感じると、まもなく心配になってくるのだ。
ひどく危険なものなんだな。

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たいていの人は、とぶことをさっさとあきらめて、法律の規定にしたがいながら、
歩道を歩くほうがいいと思ってしまうのさ。ところが、きみはちがう。
きみは、しっかりした青年にふさわしく、飛行をつづける。
・・そのとききみは、ふしぎなことを発見する
つまり、きみがしだいに飛行を支配するということ、

きみをとばせている、大きな普遍的な力に、
ある微妙な小さな、独自の力が、ある器官が、ある舵が加わるということをね。

きみはある新しい器官で、呼吸調節器のようなもので、やっているんだ。
これでがてんが行くだろう
きみのたましいが、根底において、どんなに「個人的」でないかということがね。
つまりね、たましいは、この調節器を発明するわけじゃないんだな。
この調節器は新しいものじゃない。借りものなんだよ。


    魂は個人的なものではないと。すべての人が同じだと言いたいのか。 - 銘無き石碑

神さまはそれぞれの人に特別の思召しをもっておられ、
そのひと本来の道を歩かせてくださるのだということを。

魂をそこなうよりは、肉体を十回も滅ぼしたほうがまだましだということさ。

世の中に実に美しいものがたくさんあることを思うと、
私は死ねなかった。
だからきみも、死ぬには美しすぎるものが
人生には多々あるということを発見するようにしなさい。

正しい者はたんと苦しまなければならない

青春時代は腹のすくものだが、それに劣らず空想的である。

子どものとき暮したところは、何もかも美しく神聖なんだ。

名声なんかじゃないわ そんなものに値打ちがある?
実際に本物の完全な人がみな有名になり
後世に知られていると思って?

そして花たちが死ぬように
私たちもひたすら 救済の死を 再生の死を死ぬ。