アマルティア・セン 5

(1933年~) インド出身の経済学者。 アジア人としては初のノーベル経済学賞を受賞。 貧困や飢饉の多くが、生産性の問題からだけでなく、 不平等や市場の失敗から起きることを解明した。

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純粋な経済人は、事実、社会的には愚者に近い。
しかしこれまで経済理論は、
そのような単一の万能の選好順序の後光を背負った
合理的な愚か者に占領され続けてきたのである。

たとえ効用が重要度の唯一の基礎であると認めたとしても、
ある人が享受している効用の総量と関係なく決められる限界効用の大きさが
道徳的重要度の指標として適切なものであるかどうかは、
依然として問題になる。

実際、人々はそれぞれの健康状態、年齢、風土の状態、地域差、労働条件、気質、
さらには(衣食住の必要量に影響を及ぼすという点で)体格、
などの違いに伴って、各人各様に変化するニーズをもっているのであるから、
少数の難しい事例を無視しているところと、
人々の間できわめて広く見られる種々の相違を考察対象から見落としているところに、
格差原理の問題点がある。

市場が生み出す経済的インセンティブに集中して、
民主主義によって保障される政治的インセンティブを無視すると、
非常に不安定な基本原則を選択することになります。

経済が急成長している最中は、
様々な社会集団が同時に利益の恩恵を享受しています。
この意味で、様々な社会集団が得られる利益は実質的に一致しています。
それでも、経済危機が発生した時に、どの社会集団に属しているかによって、
境遇にかなり激しい格差が生じるのです。
社会は、経済が上昇気流に乗り続けている時には連帯していても、
下降時には分裂しながら落ちてゆきます。