芸術家は、すべてを超越するからこそ、存在理由があるのである。
芸術家にとっての権力者は、自分の考えを実現するに自分一人では不可能な場合、
それに手を貸してくれる存在にすぎない。
芸術家は、善悪の彼岸にしかない自己の世界での絶対の優位を確信しているから、
権力者の前に平然とひざを屈するのである。
塩野七生『男の肖像』(文藝春秋,1992)93p
塩野七生