「東京での再会「異邦人対談」番外篇」
ぼくの場合は、
ほら、顔を上げて空の太陽を見なさいというものの見方とは逆なんです。
直接、光源を見ても、太陽の激しい光はまぶしくて見えない。
そういうときにはうなだれて、肩を落として足もとを見る道もある、と。
自分の足もとに落ちているくっきりした影の濃さと暗さこそが、
自分を背後から照らしている光の存在を気づかせてくれるじゃないか。
ああ、たしかに光は存在し、自分を背後から照らしてくれているんだな、と。
塩野七生 五木寛之『おとな二人の午後』(角川書店,2003)377p
五木寛之