孤独を嫌う人は、いったい何を考えているのだろうか。
世俗にも誰にも邪魔されることなく一人でいることは良いことなのに。
世間に従えば、心は外界の虚偽に巻き込まれやすく、
人と交流すれば、言葉は彼らに合わせるものとなり、
自ら心を失ってしまう。
ふざけあい、奪いあい、恨まれたり喜ばれたり、
定まることなく踊らされ続ける。
不自由な選択判断を迫られ、得たり失ったりが止むことがない。
戸惑いながら酔っ払うようなもので、酔いの中で夢や幻を見る。
忙しく走らされて、本質を忘れてしまう。
世間の人々は皆このような状態である。
まだ真の道を知らずとも、汚い社会から離れ、
身も心も穏やかにしていれば、この世を楽しむことができよう。
「生業、社交、技術、学問、などは捨てさればいい」と、
摩訶止観にもある。
まぎるる方なく、ただひとりあるのみこそよけれ。
世に従へば、心、外の塵に奪はれて惑ひ易く、
人に交れば、言葉、よその聞きに随ひて、さながら、心にあらず。
人に戯れ、物に争ひ、一度は恨み、一度は喜ぶ。
その事、定まれる事なし。
分別みだりに起りて、得失止む時なし。
惑ひの上に酔へり。酔ひの中に夢をなす。
走りて急がはしく、ほれて忘れたる事、人皆かくの如し。
未だ、まことの道を知らずとも、
縁を離れて身を閑かにし、事にあづからずして心を安くせんこそ、
しばらく楽しぶとも言ひつべけれ。
生活、人事、伎能、学問等の諸縁を止めよ。とこそ。
摩訶止観にも侍れ。
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