沈める滝 6

三島由紀夫の長編小説。原題は旧漢字の『沈める瀧』である。愛を信じないダム設計技師が建設調査の冬ごもりの間、或る不感症の人妻と会わないことで人工恋愛を合成しようとする物語。ダム建設を背景にした一組の男女の恋愛心理の変化を軸に、芸術と愛情の関連を描いた作品である。人間を圧倒する超絶的な自然環境の中で推移する男の心理、やがてダムによって沈む小さな滝に象徴される女、人間主義的な同僚との絡み合いを通じ...-ウィキペディア

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帚:ほうき

帚が、「自分は物を掃くためにある」と確信しているあいだは、
どんなことをしたって帚は孤独にならない。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P11

まだ持たないものを思い描くことは人を酔わせるが、
現に持っているものはわれわれを酔わせない。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P14

狼を知るには、われわれは狼にならなければならない。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P14

向こうが嘘をついているということを信じたいためには、こちらも嘘をつくべきである。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P59

われわれは何も恋文の巧さに動かされはしない。
われわれを動かすのは概してありきたりな、しかし虚飾のない手紙である。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P66

政治の要諦は、まず冷やすこと、それから急に温めることであった。
温められた人間は、かつて同じ男に冷やされたことを忘れてしまうのだ。

三島由紀夫『沈める滝』(新潮文庫)P130
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