きけ わだつみのこえ 21

生 1949年10月20日『きけ わだつみのこえ』は第二次世界大戦末期に戦没した日本の学徒兵の遺書を集めた遺稿集。1947年(昭和22年)に東京大学協同組合出版部により編集されて出版された東京大学戦没学徒兵の手記集『はるかなる山河に』に続いて、1949年(昭和24年)10月20日に出版された。BC級戦犯として死刑に処された学徒兵の遺書も掲載されている。編集顧問の主任は医師、そして戦没学徒の遺族である中村克郎をはじめ、あとの編集委員として渡辺一夫...-ウィキペディア

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自惚れた国で興隆した国はない。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版232頁

私は限りなく祖国を愛する
けれど
愛すべき祖国を私は持たない
深淵をのぞいた魂にとっては…

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版157頁

    戦争を批判する前に、自分の目の前の人生を改善したらどうだ。怠惰は知性さえも鈍らせるようだ。 - 銘無き石碑

俺は人間、特に現代の日本人の人間性に絶望を感じている。
恐らく今の人間ほど神から遠くかけはなれた時代はないと思う。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版280頁

私の時間は泣いているのに私の時計は笑っている。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版171頁

人間は、人間がこの世を創った時以来、少しも進歩していないのだ。
今次の戦争には、もはや正義云々の問題はなく、
ただただ民族間の憎悪の爆発あるのみだ。
敵対し合う民族は各々その滅亡まで戦を止めることはないであろう。
恐ろしき哉、浅ましき哉
人間よ、猿の親類よ。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版284頁

    君は君の愚かさ故に滅びるのだなあ。 - 銘無き石碑

    自分の愚かさに気づいて、改められたら、問題なし!! - 銘無き石碑

    君はそこまで愚かじゃない - 銘無き石碑

    身内の遺書もない愚物には、死者の言葉も馬の耳に念仏 - 銘無き石碑

日本軍隊においては、人間の本性たる自由を抑えることを修業すれど、
謂く、そして自由性をある程度抑えることができると、
修養ができた、軍人精神が入ったと思い、誇らしく思う。
およそこれほど愚かなものはない。
人間の本性たる自分を抑えよう抑えようと努力する。
何たるかの浪費ぞ。自由性は如何にしても抑えることはできぬ。
抑えたと自分で思うても、軍人精神が入ったと思うても、
それは単に表面のみのことである。
心の底には更に強烈な自由が流れていることは疑いない。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版372頁
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日本人はもっと謙譲であるべきはずだ。
黙々として、永遠に全人類の心の底を脈打って流れる偉大なる貢献をなしてこそ、初めて日本民族の偉大性が燦として全人類史を飾ることになるのである。

新版『きけわだつみのこえ』岩波文庫版232頁

すべてを否定し、虚無の生活思想になり得たらどんなに愉快だろうか。国家とは果して全人類にとって必然的に生じなければならぬ社会団体なのだろうか?
ただ、歴史的に存在していたから今なお維持されているというにすぎぬのではあるまいか。

新版『きけわだつみのこえ』 岩波文庫版103頁

いわゆる上官と称するものの空虚さよ。「狂態」この言葉を送りたい。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版168頁)

偉大なる人格は造ろうとして造り得るものではない。
飛行機や船等は造り得る。
存在した、存在する偉大なる人格は、
単に日本のみではなく、全人類の宝である。
しこうしてそういう宝を数多く持つ民族ほど
偉大なる民族であると言わねばならぬ。
真に内的な苦悩を経験しない者は
決して偉大なる人格と言うことが出来ない。
真に内的な苦悩を経験しない民族もまた、
決して偉大なる民族と言うことは出来ない。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版240頁)

現実に押し流される人は、
現実は複雑で単純な理論なんかには乗らないと言いますが、
うその理論にはどんな現実だって乗らないでしょう。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版29頁)
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今の生活に都合が悪いからといって批判をすてたなら、
かえって、ほんとうの幸福をうしなうことになると思います。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版29~30頁)

厳格さばかりでは、我々は動かされない。
humanismだけが自分らを動かしてゆくのだ。
兵もまた一人の人間であることを忘れてよいとは思われない。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版57頁)

フェニックスのように灰の中から立ち上がる新しいもの、
我々は今それを求めている。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版197頁)

兵営内には一人として人間らしい者はいません。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版88頁)

日本人の死は日本人だけが悲しむ。外国人の死は外国人のみが悲しむ。
どうしてこうなければならぬのであろうか。
なぜ人間は人間で共に悲しみ喜ぶようにならないのか。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版275頁)

「軍服着た間は学問を忘れたら」との忠告に、
「軍服着たって学徒で候」と返事した。知性が私の武器である。

(新版)第二集『きけわだつみのこえ』 岩波文庫版24頁

学徒は真理の使徒である。学徒の愛国は国家の真実を護ること。
学徒の魂は真実のない国家よりも、国家のない真実を求める。

(新版)第二集『きけわだつみのこえ』岩波文庫版25頁

俺はどのような社会も、人意をもって動かすことのできる、流動体として考えてきた。しかし、そうではなさそうである。ことにこの国では社会の変化は、
むしろ、宿命観によって支配されている不自由な制約の下にあるものらしい。

(新版)第二集『きけわだつみのこえ』岩波文庫版41頁

俺たちは冷酷な一つの意志に支配されて運命の彼岸へ到着する日を待たねばならない。俺はそして最後の誇りを失わない。
実に燃え上がる情熱と希望と夢とを最後まで失わない。

(新版)第二集『きけわだつみのこえ』岩波文庫版42頁

私は戦を抜きにして戦に征く。その言葉を解してくれるものはないかも知れぬ。
ただ私は人の生命を奪おうとする猛獣的な闘争心は今持たぬのである。
そうしてこの憐れな、まるで渦中にすいこまれるような思いで、
私は戦に征くのである。

新版『きけわだつみのこえ』(岩波文庫版277頁)

    君の暗さについてゆけない。 - 銘無き石碑