こういう本は、売れるんですなあ。実際に手に負えぬ息子を持つ母親だけでなく、
それほどでもないのに常におぼえている母親たちも、買うからかのでしょう。
これらの母親たちは、これを読んで、
「まあまあうちの息子は、これほどでなくてよかった」
と、秘かに安心したいからなのです。
塩野七生『サロメの乳母の話』(新潮社,2003)98p
塩野七生
出版した本の題名は、『手に負えぬ息子を抱えて』というのです。
宣伝文句には、――泣きたくなる母の心情の、赤裸々な全告白!――とありましたよ。