ユダの母親
出版した本の題名は、『手に負えぬ息子を抱えて』というのです。
宣伝文句には、――泣きたくなる母の心情の、赤裸々な全告白!――とありましたよ。

こういう本は、売れるんですなあ。実際に手に負えぬ息子を持つ母親だけでなく、
それほどでもないのに常におぼえている母親たちも、買うからかのでしょう。
これらの母親たちは、これを読んで、
「まあまあうちの息子は、これほどでなくてよかった」
と、秘かに安心したいからなのです。

塩野七生『サロメの乳母の話』(新潮社,2003)98p
塩野七生

塩野七生 701

生 1937年7月7日
日本の歴史作家(プロの学術研究者ではなく「小説家」)である。名前の「七生」は、7月7日生まれであることに由来。...-ウィキペディア


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