二部屋からなる陰気な地下の住居に、労働者の七人家族が住んでいるとする。
五人の子供の中に、男の子が一人いる。
仮に三歳としておこう。ちょうど物心がつく頃だ。
頭のよい子なら年をとっても、この頃の思い出が残っているものである。
だが、場所の狭さと過密がお互いの関係をまずくして、往々にして争いと不和が起こる。
人々は一緒に生活しているのではなく、むしろ押しあって生活しているのだ。
広い住居にいるなら、ちょっと距離を置いて頭を冷やすことで仲直りできることでも
ここでは果てしない、陰湿な対立として続く。
子供の場合はもちろん、我慢できる。かれらはこういう状態では必ずけんかをするが
互いにすぐけろりと忘れてしまう。
だがこの争いが両親の間で行われ、毎日のように内心の下品さを容赦なくさらけ出すと
こういう情操教育は、必ず子供を蝕んでいく。
父から母に対する暴力、酒を飲んでの虐待となると、子供にあらわれる結果はどうなるか。
こういう境遇を知らない者には、想像すらできないだろう。
公立学校に入るのである。かろうじて読み書きだけは覚えるが、ほとんどそれで全部だ。
家庭で勉強は話題にさえならない。
むしろ逆に、父母は口にするのもはばかられる言い草で、教師と学校について、それも子供たちに向かって悪口を言う。
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