かわいい。人が見たらどや知らんけどわいが見たらかわいい。
(中略)
もう、あれ外したら他ないね。うん。
また、あれももらい手ないやろけどね。
これには、かつら枝代夫人(本名前田志代子)像ともいえます。
中略部分の中でも、
「ありがたい。根が陽気や、うん。
ほんまやで、わいらみたいね妙にまじめな人間はいかん。
落ち込む時がある。
あれええね。落ち込まん。落ち込む穴がないのやね。」
「不思議な女やねぇ、ふぁー、ふぁー、いうてね、
『一緒に死んでくれぇ』
っちゃなこと言うても、
『イヤ』っちゃなこと言うてね、
『うちは生きていく』
ちゃあ言うねやあれ。」
「酒飲むことも、『あんた飲めんようになったら仕方ないけれども、幸せにして、飲める時は飲んでください。
それで気が発散すれば、それが何よりですよ』・・・
わい毎晩飲んで帰る。
考えたら酒飲みの世話するためにいるようなもんやね。」
「そんなこんなで年取っていくなんね。
因果なもんや。」
「腹の中では
『すみません、ありがとうございます』
っとこう言うけどね、
顔見たらそういう甘いとこ見せたらいかん。
顔見たら
『バカーッそっちぃ行けー!』
言うて、腹んなかでは
『ごめんなさい、ありがとうございます』・・・」
嫁さんがまだ表にいて立っているのに気がつくと、
志代子夫人のいる下座の方に向き直って、
「お前、聞いてるのか!
早う行け、こらっ!」
「ウーーン、みんな聞かれてしもたー。
どんならん。一生の不覚やね。」
と照れ隠しに喋った。
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