いじめ問題は、各新聞にセンセーショナルな記事と怒りの社説を書く機会を与えた。
しかし、この問題には、はるかに重要な意味がこめられているのである。
これはいわば象徴的な問題で、深く道徳がかかわっている。
すなわち、二つの陣営が支配権をめぐってしのぎを削る闘いを繰り広げており、
勝者のやり方で若い世代を『システム』に適応させようというものであった。
この種の問題はどれも、戦前の教育慣行の復活に有利な土壌づくりを目指す、
しつけ重視の文部省と、教育問題に熱心な自民党内のグループを、
ある程度、利するものである。
これに反対する陣営には活動家教師、問題を憂慮する知識人と親たちがいる。
管理者の考えでは、米占領軍当局が国粋主義的な教育を一掃して以来、
しかるべき『道徳』教育の不在が、今の教育制度の最大の問題だとする。
政府の見解は、中曾根元首相の発言にあるように、
この問題の大もとは各家庭と社会全般に規律がないためだとしている。
一方、日弁連は、
本当の問題は校則が厳しすぎるためだと結論を出している。
日教組は生徒をランクづけする制度にあるとしているが、
公立中学や高校で増える校内暴力について、
管理主義をさらに強化することによって対処しようとする学校が多くなっている。
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