世の中はしつこい、毒々しい、こせこせした、そのうえずうずしい、
いやな奴で埋っている。元来なにしに世の中へ面を曝しているんだか、
解しかねる奴さえいる。しかもそんな面にかぎって大きいものだ。
浮世の風にあたる面積の多いのをもって、
さも名誉のごとく心得ている。
『草枕・二百十日』(角川文庫版119頁)
夏目漱石