こんにち、いたるところに栄えている国家をつらつら考えてみますと、なさけないことに、私は、自己の利益を国家の名によって得ようとする金持ちたちの陰謀のほかは何も見ることができません。かれらは、まず、どうしたら不正にかき集めたものを失う恐れなく安全に保持できるか、そして次には、どうしたらできるだけ少ない金で、貧民の労力をやとって、それを濫用することができるか、ということについての、あらゆる手段と奸策を工夫し案出するのです。
(ユートピア)
桑原武夫編『一日一言』岩波新書 112頁
トマス・モア